東日本大震災の津波で壊滅的被害が出た宮城県南三陸町で28日、ボランティアらががれきや泥の中から回収した写真などの返還が始まった。廃校舎の会場に集められた写真は10万枚、アルバムは2千冊に上る。被災者は一枚一枚手に取り、思い出をたぐり寄せていた。
赤ちゃんの元気な笑顔、入社式のかしこまった表情――。南三陸町旧入谷中の教室や廊下にはこの日午前、おびただしい数の写真が張り出され、床一面にアルバムがびっしりと並べられた。
位牌(いはい)や表彰状、ランドセルなどもあり、自分の物を見つけた被災者はボランティアのスタッフに申請して引き取っていった。
20年以上前の娘の幼稚園時の写真を見つけたという、細谷かつ江さん(53)は「家も写真も全部流されてしまった。2枚しか見つからなかったけど、当時のことを思い出して自然と涙が出てきた」。
三浦知恵さん(31)は、津波で行方不明になった勤務先の社長の写真を発見。「若い頃の写真だけど、面影があってすぐにわかった。早く家族に届けてあげたい」と笑顔で話した。
掲示された写真は、同町の佐藤仁町長の提案で結成された「思い出探し隊」のボランティアメンバーが町内で回収し、一つ一つ汚れを取り除いたもの。隊にはこれまでに約1千人が参加し、自衛隊も回収に協力してきた。洗浄技術はフィルムメーカーの指導を受けた。
隊のリーダーを務める東京都の佐々木育子さん(43)は「裏面まできれいにして返還できるように心がけた」と振り返る。
第1回となる今回の返還は6月5日まで。洗浄が済んでいない写真はまだ今回の3倍ほどあるという。1960年のチリ地震津波と今回の津波で2回家を流された佐藤町長は「ここに来て、人生の一ページを少しでも取り戻してほしい」と話していた。