2011年2月20日10時1分
車を持たずに、みんなで使い合う「カーシェアリング」。電気自動車(EV)との相性もよいとされ、セットで普及を目指す動きが出てきた。欧州のように、公共交通機関を補うような存在になるだろうか。
日産自動車のEV「リーフ」が急速充電器の横にとまる。運転者が充電しようとすると、係員が「カーシェアリングの予約段階で、電池の残量や走れる距離が分かれば便利ですよね」と話しかける。
カーシェアとEV。二つを組み合わせる実証試験を、総務省の委託を受けたゲーム会社バンダイナムコゲームズが、21日まで横浜市のみなとみらいで開いている。
総務省の構想はこうだ。
EVがどれだけ充電されているかをカーシェア会社が通信網を通じて把握する。利用者はカーシェアを予約すると充電情報がわかり、どれだけ走れるか知ることができる。
バンダイナムコはゲーム開発で培った通信技術を生かす。「走行できる範囲をあらかじめ地図で表示できれば、利用者も使いやすい」と、研究開発担当の船津哲也さん。
EVはカーシェアと相性がいい。ガソリン車と違い、充電情報を通信で簡単に飛ばせる。「カーシェア利用の8割以上が50キロ以下の移動」(オリックス自動車)のため、1回の充電で走れる距離が短いEVでも対応しやすい。
「環境へのやさしさ」も共通する。EVは二酸化炭素の排出削減、カーシェアは無駄な車が走るのを抑える。
さいたま市大宮区は公用専用車2台をやめ、EV2台を導入した。平日は地域住民の会員とカーシェアし、予算削減と環境対策双方をねらう。
都市部の分譲マンションでは、充電設備やEVカーシェアを備えた物件も出始めた。EV普及を見据えて、将来はマンションの価値が上がるとアピールする物件もある。
「こんなに静かで楽に運転できるとは思わなかった。体験したらEVの良さがわかる」とさいたま市の赤塩秀さん(70)。カーシェアで初めてEVに乗った。日産リーフは約376万円とまだ高い。気軽に使えるカーシェアはEV体験のきっかけにもなる。
カーシェアは不況で家計を切り詰めるのに合わせて利用が増えた。車を買うのは大変だし、駐車場やガソリン代もばかにならない。だけど、スーパーへの買い出しなどには車が便利だ。そんなニーズから、大都市を中心に「所有から共有」という意識の人が増えている。
交通エコロジー・モビリティ財団によると、2006年1月には車両台数約120台・会員数約1700人だったが、11年1月には約3900台・約7万3200人に広がった。この勢いがEV普及にもつながる可能性がある。
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カーシェア普及には課題もある。「近距離で片道だけ」の希望も多いが、車庫法では「乗り捨て」ができない。
レンタカーは利用者が乗り捨てても、レンタカー会社の社員が元の営業所に戻すことで同法をクリアしている。カーシェアは無人貸し出しが基本なので、レンタカーのような乗り捨ては難しい。今後、駅前の駐車場などにスペースを確保している場合、車庫法の例外扱いで乗り捨てを認めるなどの規制緩和が必要だ。
そもそもカーシェアが増えたのも規制緩和のたまものだ。国は04年、ITを使って車両の貸し出し状況などを把握できる場合、「構造改革特区」に限って「無人の拠点での車の貸し出し」を認めた。06年に、この緩和を全国に広げ、無人貸し出しが基本のカーシェアが増えた。
スイスやドイツでは鉄道とカーシェアが使える共通カードがある。駅ごとに貸出場所があり、公共交通機関を補う役割もある。フランスのパリでは11年中に常時使えるEV約3千台を用意する。指定された1千カ所なら乗り捨て自由。都市での車の使い方を根本から変えようとしている。
日本総合研究所の武藤一浩主任研究員は「公共交通機関を補うサービスとして発展するには、地域に合わせた運用方法を行政とカーシェア会社が協力して模索する必要がある」という。(金井和之)