これまで婚活をしなかった人々が思い込む
「結婚は当たり前のライフプラン」という幻想
本日5月2日は日本記念日協会が認定した「婚活の日」らしい。
5(コ)と2(ツー)の語呂合わせが由来になっているそうで、多少強引すぎるように思えるものの、こういった日が制定されること自体が、現在の婚活情勢が活況を迎えている証拠だろう。
その背景には、これまで多くの人が「当たり前」だと思っていた「結婚」というライフプランが、当たり前ではなくなったことに対する危機感がある。
結婚相手紹介サービスのサンマリエが、婚活中の男女に「これまで婚活をしなかった理由」を聞いた調査の結果では、「婚活しなくても結婚できると思っていたから」と答えた人が男女とも最多だったという。男性が21.0%で、女性は30.3%にも及ぶ。
アンケートに寄せられたコメントでは、
「自然に出会って付き合って、結婚っていう流れになるんだろうなと漠然と思っていた」(男性/35歳)
「小学校を上がると中学生になるように、大人になったら働いて、結婚するものと思っていました」(34歳/女性)
などという意見が見られた。
「大人になれば結婚する」ということを誰もが信じることができた時代は、すでに失われてしまっている。価値観が多様化したことに加え、女性の社会進出や若年層男女における可処分所得の逆転など、社会情勢も大きく変化した。
一方、人々が抱く結婚像は、それに合わせて柔軟に変化しているとは言えず、たとえば出産後の女性の復職に関する会社や男性側のサポートも十分ではない。
また、連載第1回でも紹介したとおり、1960年代後半から「恋愛結婚」が「お見合い結婚」の数を上回り、お見合いで結婚したカップルは2005年には6.4%まで減少した。いわゆる「お見合いオバサン」も徐々に減り、結婚のお節介を焼いてくれる「地域コミュニティ」も崩壊しつつある。
お見合いオバサンが婚活支援課に交代?
「出会いの機会」を再配分しようとする行政
そんな現状を鑑み、「婚活支援」に名乗りを上げる自治体が増加しているというのが、今回のテーマだ。最近では、自治体主催の婚活パーティーが至るところで行なわれるようになった。今やお節介を焼いてくれる「お見合いオバサン」は、お役所の「婚活支援課」となったわけである。
しかし、自治体はお見合いオバサンのように、なにも趣味の延長で若い男女を引き合わそうとしているわけではない。お役所が動くということは、そこに「公共性」という大義名分がなければならない。
その「公共性」とは、言わずもがな、少子化や人口減少による過疎化を食い止めることである。つまり、「男女の出会いの場」を1つのインフラ(社会的基盤)と捉え、整備しようということなのだろう。
かつては、水道や電気、ガスのように「結婚」を当たり前に享受できるものだと誰もが思っていたが、現在はそうではない。ならば、公費を投入し、「出会いの機会」を再配分しようという試みだとも言える。
民間の婚活市場が活況を迎える一方、婚活支援の公共サービス化も着実に進んでいる。今や、民間の結婚相手サービス会社と契約を交わし、「縁結び事業」に乗り出す自治体も現れた。
イオングループのツヴァイと契約して婚活支援を決めたのは、和歌山県印南町。太平洋に面した県中部に位置する人口9163人の町で、うすいえんどうやミニトマトなどの産品がある。町担当者によると、町には高校や大学がなく、大きな企業も少ない。大阪などの都市部に人口が流出する「社会減」に加え、高齢化による「自然減」も進み、人口は1990年と比べて1152人減少した。
民間の婚活事業者とタッグを組む自治体も
入会金10万円を公費負担する熱の入れよう
そんな現状に歯止めをかけようと始めたのが、ツヴァイと組んで行なう「縁結び事業」だ。具体的な支援内容は、同社のサービスへの入会金10万円を町が負担するというもので、1年以上住民登録している20歳以上の町民が対象となる。負担するのは入会金だけで、月会費(8000円)は自己負担になるとはいえ、自治体が税金を投入し、民間企業への会員加入を促進することは珍しい。
町にとって、婚活支援は農家の後継者対策においても重要な施策と言える。多くの場合は、結婚という「当たり前」を基本として受け継がれていた職業なだけに、「当たり前」の崩壊は産業自体の崩壊を招きかねない。
ただし、男女の出会いの場を提供するという施策には「対処療法的」な側面もあるため、同町では、幼保一元化施設のオープンや賃貸住宅の家賃助成など、多方面からの「若者定住対策」を行なっていく方針だ
人口流出に悩む自治体は地方だけではなく、東京都内にも存在する。島しょ部を除く都内唯一の村である檜原村では、1999年に3478人だった人口が、2011年4月には2673人まで減少。減少率では印南町を上回り、深刻な過疎化が進んでいる。村では東京でありながら自然環境に恵まれた立地を生かし、NPOと組んで薪割り体験やバーベキューなどを通した婚活イベントを開催するなど、事態の打開に向けて奮闘している。
もう1つ、自治体による婚活支援の事例を挙げておこう。
愛媛県では、地元の法人会連合会に委託し、「えひめ結婚支援センター」を運営している。仕組みとしては、まずはメールマガジンに登録してもらい、婚活イベントを主催する「応援企業」などの情報を会員に配信。
イベントで男女が出会って付き合い始めた後も、コーディネーターやボランティア推進員などから「上手に付き合うためのアドバイス」も受けられる。最終的に結婚まで行き着けば企業から特典を得られるという、会員にとって至れり尽くせりなサービスだ。
さらにユニークなのが、「協賛企業」という制度で、A社やB社といった、別々の企業の独身男女が集まって交流会を開くというものだ。言うなれば、企業単位のお見合いといったところだろうか。
愛媛県によると、2011年3月31日現在のメルマガ登録数は8112人で、そのうち独身男女は7145人。残りは、息子や娘の結婚を心配した親などが登録しているという。
2008年11月のオープン以来、575回のイベントを開催し、参加人数は16340人。わかっているだけでも2150組のカップルが誕生している。イベントの募集をかけるとすぐに定員に達するほどの大人気だ。
未婚の危機感が強い女と結婚に尻込む男
出会いの提供だけでなく景気対策も必要?
ただ、現状のメルマガ会員で言うと、男性2912人に対して女性は4233人と、女性が男性を大きく上回っている。一方、県内の未婚率は25~29歳が男性65.1%、女性55.0%、30~34歳が男性42.2%、女性30.2%となっており、いずれも男性の人数の方が多い。これは、女性の方が結婚に対する危機感が高い現れだととることができるが、この男女比率の不均等は何を意味するのだろうか?
男性が婚活に乗り気でない理由の1つに、やはり先の見えない不況からくる金銭的な不安があると思われる。にもかかわらず、女性の専業主婦願望が高まり、余計に男性を追い込む形となってしまっている。
その部分を解決しなければ、いくら「出会いの機会」を提供しても、婚活に二の足を踏んでしまう男性は残るだろう。社会情勢の変化に対応した人々の意識改革も必要だが、行政側も婚活支援に加えて、景気や雇用対策も進めなければならない。
また、地方より「出会いの機会」が多いはずの東京で未婚率が全国平均より高いことから考えても、「出会いの機会」の再配分が、未婚化、晩婚化を防ぐ万能薬ではないことがわかる。
ただし、これまで見てきたような自治体による婚活支援の施策も一定の成果を上げており、結婚におけるセーフティネットの役割を担っていると言うこともできる。婚活の公共サービス化が我々の社会に何をもたらすか。その評価が下るのはこれからだが、少子化対策という大義名分がある限り、今後も様々な婚活支援策が展開されていくことだろう。
●ロス婚の福音
一世代前の結婚像を見て育った私たちは、結婚とは特別な苦労をしなくても誰もが享受できる人生のイベントだと信じ切っていたきらいがある。しかし、それが崩壊してしまった今、結婚したいと思っていてもできない人が急増し、ついには行政が救いの手を差し伸べる事態にまで至った。
安定した財源を確保したい自治体にとって、「結婚」という制度や価値観を維持することは大きなメリットがある。一方、結婚という、現在では個人の意志が最優先に尊重される事柄に行政が関与することに対して、懐疑的な人も一定数いる。
結婚のセーフティネットは機能するか
このままいけば「婚活支援税」の導入も?
このまま進めば、いずれ、既婚者から「婚活支援税」が徴収され、義務教育課程に「異性間コミュニケーション学」なる科目が導入されるかもしれない・・・・・・。というのは、さすがに冗談だとしても、引っ越しする際に、婚活支援が充実している自治体を選んで転入する人が増えるということくらいは、あり得そうな話だ。
今後、行政だけでなく、政治家のマニュフェストや企業の福利厚生などにおいても、「婚活支援」という言葉がキーワードになっていく可能性がある。「弊社では30歳未満の結婚率が90%を超えておりまして・・・・・・」と人事担当者が真面目な顔をして就活中の学生にPRする日がくるのかもしれない。

